遠い記憶
私は国から派遣された父に従い、赤道直下のインドネシアで幼少期を過ごしていました。
私の住んでいたところは首都から遠く離れた島の州都で、日本人はほとんどいなかったそうです。
近所に隻腕で初老の日本人が住んでいました。
今となってはその外見がぼんやり記憶にある程度なのですが。
後に両親に聞いたところ、彼は元日本兵でした。
終戦後もインドネシアに残り、インドネシア独立のためにイギリス・オランダ軍と戦った義勇兵だったのです。
インドネシア独立戦争に身を投じ亡くなった元日本兵は、インドネシアの英雄墓地に埋葬されています。
一方で300年以上続いたオランダによる支配の影響は色濃く残っており、私が通ったキリスト教系幼稚園のシスター達はオランダ人でした。
私たち家族は三年の駐在を終えて帰国しました。
隻腕の彼がその後どうなったのか、もはや知る術はありません。
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