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2010年1月29日 (金)

上達法を探る 05

020405t 今回から判断能力の話に入っていきます。

おさらい

サーマルグライダーの本質は、見えない空気の機微を能動的に探って読み解き、それを利用することにあります。グライダーはそのための道具です。

サーマルが見えないことは始めたばかりの人を大いに苦しめる要素です。しかし、見えないということは、そのうちに苦ではなくなります。見えないものを自在に利用する楽しさの要素になりうるわけです。

さて、02回で書いたようにサーマルグライダーで言うところの能力は大きく判断能力と操作能力に分かれます。
判断能力は「いつどこでどのように」機体を動かすか、を判断する能力です。

良い判断基準の形成が目標

それでは判断能力について練習のしかたを考えましょう。
判断能力を向上させるというのは、すなわち自分の中に実践に耐える判断基準を持つということです。
フィールドでよく聞く「そこサーマルだ」とか「ウェーブかな」などという結論は、その人が状況と機体から送られるビジュアルな合図を自分の判断基準にあてはめて得られたものです。
この判断基準を形成し、洗練していこうというわけです。

そのために私が考える練習の指針は、A.基本的原理を理解すること、そしてB.経験を正しく分析し、その結果を蓄積することを通じて、最終的に良い判断基準を形成しようというものです。

言葉が難しくなりましたので簡単にします。

A「基本的原理の理解」は、機体と気象の双方についてです。講学上の知識ではなく実践レベルで体感するために要求されるものですから、素人レベルでも間違ってさえいなければOKだと思います。そして、科学的原理のうち、機体自体に関する部分はすでに製品自体や説明書にかなり織り込まれています。したがって必ずしも全て理解しなくてもいいのですが、自作を目指す人は勉強することが必要でしょう。

B「経験の正しい分析とその結果の蓄積」は、最後の良い判断基準を作るという点が到達点になることを念頭に置いておきます。

現在の状況を判断基準に当てはめて瞬間的に判断し、行動に移すことができるようになるればいいわけです。トンビはこれを無意識に行うのでしょうが、この営みを知的に行わなければいけないのが、人間の飛ばすサーマルグライダーです。

判断基準はいいものをたくさん持っているほど有利ということになります。
この判断基準というのは、サーマルを見分けるレンズのようなものです。なぜレンズにたとえたかというと、01回で書いた「合図」を見て読み解くことが必要だからです。そしてこの判断基準=レンズは、知識の正しさと経験の正しい分析・蓄積によって形作られ、磨かれます。上手な人はレンズの解像度が高いのと同じなわけです(「サーマルが見えるメガネ」などとよく冗談で言われますね)。

二つの要素のうちBの要素が練習の上で特に大事な本質だということを認識してください。Bの要素は必ず自力で一定の量をこなすことが必要なので、ここで差がついていきます。

ではについてもう少し詳しく分析して話をします。
①「経験の正しい分析」と、②「分析結果の蓄積」、これがBの内容です。

元になる素材は「経験」です。この素材をどう料理するかが大事なわけです。
まず、この料理の素材をとにかくたくさん用意してください。他人のフライトを見ることも経験に含めて良いでしょう。
ただし、経験は時間を費やすだけでは足りません。後で分析できるように、素直な(思い込みを排した)目でよく(ただし広い視野で)観察してください。そのとき、間違った知識が入っていると経験にバイアスがかかってしまいますから要注意です。

経験を増やすには、今までやっていなかった飛ばし方も試してください。先述したように機体に出来ることを把握することは重要ですし、また無駄なことを無駄と実感することも重要な経験だと思います。

 さて、ではまず得た経験の分析について説明します。
経験といっても生の素材だけでは何も得られませんから、これを01回で書いた「合図」の観点からよく見直します。これが分析です。この作業は現場でもフライト中に、あるいはフライト後にしますし、家に帰ってからもします。最終的にその場でできるようになることが目標です。
たとえばあの挙動は、あの舵の効きの変化はなんだったのか?あの風向きの変化や体感気温の変化はなんだったのか?これをできるだけ分析して、知識に照らしあわせます。そして、自分で挙動の「理由」を想像してみてください。このとき、気象の知識をベースに想像します。
「あの動きは、上昇気流周辺に生じるという乱流によるものだったのかもしれない。」とか、「あそこで上昇気流から外れたらしい。」「風が止まって暖かく感じたのは自分のいる場所でサーマルが発生したときだったのかも」とか。
もしもフライト中に判断できたら、その場で、あるいは次のフライトでその判断をたよりに行動に移してみてください。その行動の結果もまた、さらに分析の対象になる経験となるわけです。「どうも今の判断は間違っていたようだ。」あるいは「さっきの考えは正しかったらしい。」という具合に。

また、他人から直接聞いて得た判断基準がうまく使えるかどうか、これもまた経験です。

※このとき、わからないことは無理に結論づけず、謙虚に保留して(ただの経験という素材のままにして)おいてください。また、自分の結論が間違っていることも多いので、思い込みを捨てて常に謙虚に修正する心構えが必要です。簡単に、あるいはたった一つの理由によって結論付けられる現象は多くはないのです。

 このようにして得た多くの経験がサーマルを見るレンズを形成し、磨いていきます。わからなくて保留したことも、いずれ他の経験をヒントに解かれていくでしょう。

こうして実際にあなたの中に形作られた判断基準は、簡単には言い表せないものになっていくでしょう。すると「テールが上がっていればサーマル」のようなよく言われる判断基準は、万能ではないということがわかるはずです(例えば機体が真上にいるときには使えません)。一言で語られる判断基準は、一定の条件下という限定付きで参考になる指標にすぎないということです。
もちろん、よく言われる指標はもっとも体感しやすいものでしょうから、重視してもらって構いません。しかし、それが全てではないし実際飛ばす条件に合致するとは限らないということを良く認識してください。

今回はここまでにしておきます。

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コメント

私の目はまだほとんど節穴状態です。自分のあるいは人の機体の挙動を必死になって観察しているのですが今ひとつ見えてきません。
自分の時は失速寸前まで機速を落としバランスをくずれやすくして観ているのですが時々しかサーマルを見分けられないのが今の状態です。
また機速を落としているため探れる範囲がきわめて狭くなっています。これもなかなかサーマルに乗れない理由かなと思っています。

始めてから期間がまだ浅いのでこれは仕方がないことでしょう。そう直ぐにうまくなってしまってはじきに飽きてしまうでしょうから。
研鑽の日々です。

毎回楽しみに読ませていただいています。

投稿: tsuzuki | 2010年1月31日 (日) 22時34分

tsuzukiさま
他人の機体を見る場合は操縦の負担がありませんから、気楽に視野をうんと広げて見てみてください。
操縦時には見えにくい飛行の軌跡と速度変化を意識して、空に描かれる線を見つけてみてください。
慣れると機体がポンと持ち上がったり、姿勢が変化していないのにぐっと減速したり、いろんなことが見えてきます。

私が現在書いていることは多分に観念的で抽象的です。これは「器」を語っているためで、それを入れる中身にあまり言及していないためでもあります。

実際問題、この中身=「じゃあどうなればサーマルなのか」を知りたいという方が多いのでしょう。しかし今回の最後に書いたように、その場で得られる全情報を知らないと何とも言えません。

各人が器に入れた判断基準に状況を入力して、出た答えがサーマルか否かということになります。
「テールが上がって見えればサーマル」「舵が良く効けばサーマル」というありがちな状況を示した格言(?)通りの状況があったとしても、上がっていかないことだっていくらでもあるのです。
つまり判断基準はあまり単純化すべきではありません。

本当の判断基準は、多くの経験則に基づいて作られた、言葉に表しがたいものになっていくはずです。
「勘」というものに近い総合判断と言ってもいいでしょう。

したがって、最後まで読んでいただいても「こうなったらサーマルだ」という便利な公式は出てきません。
それでもよければお付き合い下さいませ。

投稿: ウエノ | 2010年1月31日 (日) 22時52分

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